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エイズの病原ウイルスであるHIV(ヒト免疫不全ウイルス)に感染して生きている人はいま、世界全体で約3300万人と推定されています。2007年末現在のこの推計は、実はその前の年に発表された2006年末現在の推計(3950万人)より減っています。国連合同エイズ計画(UNAIDS)の説明によると、これは各国の報告システムの改善や推計技術の向上により、報告されるデータの精度が高くなった結果、推計数を下方修正したことによるものです。下方修正前(06年版)と下方修正後(07年版)は以下のようになっています。 HIV/エイズ推計の下方修正(UNAIDS、WHO) 06年版推計 08年7月UNAIDS報告書 (06年末現在) (07年末現在) HIV陽性者数 3950万人 → 3300万人 年間新規HIV感染者数 430万人 → 270万人 エイズによる年間死者数 290万人 → 200万人 あくまで推計の見直しによるものなので、HIVに感染して生きる人の数が減ったということではありません。いままで考えられているよりは少なかったということで、いまも世界全体のHIV陽性者数の増加傾向は続いています。 ただし、1990年代末以降、世界がHIV感染の予防対策に力を入れてきた成果が次第に現れ、HIV感染の拡大傾向に歯止めがかかりつつあることをうかがわせるデータもあります。UNAIDSによると、新しい推計手法を用いて過去の報告を見直していくと、毎年の新規感染は1998年当時の推定340万人がピークで、21世紀に入ってからは300万人を割り、07年末現在は推定270万人と見られています。 感染した人の体の中のHIVを完全に排除して、完治の状態を実現することは現在の医学でもまだ不可能ですが、体内のHIVが増えないようにしてエイズの発症を遅らせたり、症状の進行を抑えたりする薬は開発されており、こうした治療薬を複数組み合わせることで高い延命効果が期待できることも1990年代の半ばから報告されるようになってきました。このため、2000年前後から貧困や脆弱な保健基盤のために治療を得られないまま死んでいく途上国のHIV陽性者に何とか治療を受けられる条件を整えようとする国際社会の動きが顕著になってきました。 その結果、2003年12月には、緊急に適切な治療が提供されなければ、2年以内に死ぬだろうと考えられている途上国のHIV陽性者300万人に対し、2005年末までに必要な治療が提供できるようにしようという世界保健機関(WHO)と国連合同エイズ計画(UNAIDS)の「3バイ5」計画がスタートしました。この時点では緊急に治療が必要なHIV陽性者は世界で約600万人と推定されていたので、すくなくともその半数の人は治療を受けられるようにしようというのが計画の趣旨でした。 この目標は、計画通り2005年に達成することはできなかったのですが、2年遅れの2007年末の段階には300万人に近いHIV陽性者に治療が提供できる状態が実現されました。 それ自体、大きな成果ではあるのですが、このときには治療を必要とする世界のHIV陽性者の数は600万人ではなく、900万人に増えていました。つまり300万人に治療を提供するという目標には達したのですが、それは必要な人の半分ではなく3分の1でした。 現在の世界の目標は2010年までにHIVの予防、治療、ケア、支援の普遍的アクセスの実現です。治療を例に取れば、普遍的アクセスというのは、治療を必要とするすべてのHIV陽性者に治療を提供することです。しかし、いくら治療を提供しても、新たに感染する人がそれ以上に増えていったのでは、とても普遍的アクセスは実現できません。そこで、現在は治療とあわせて、予防の重要性も大きく強調されています。 こうした世界の動きには、日本も2000年7月の九州沖縄サミット以来、積極的に関与してきました。この点は高く評価するとともに、今後も継続的に積極的な貢献を続けていく必要があることも、あわせて強調しておく必要があるでしょう。 |